ミステリアスビューティ

ボクがアベベのマスターをやっていたとき、いろんなお客が店にやってきた。
そのなかで、いつもカウンターに座ってコーヒーを静かに飲むとびきりの美人がいた。
知的な美人だけど、憂いを感じさせる面影はどこかのお嬢さんという感じでもない。
気軽に話しかけられる雰囲気ではないけれど、かといって他人を寄せ付けないというような冷たさもなかった。
ミステリアスな雰囲気のその美人は、ボクはもちろん、店に来る男どもの気になる存在だった。
どこの誰だろう? 
口にはしなくても、その美人が店にいるときは、ほかのお客がそれぞれ話しながらも彼女に意識を集中している様子がボクにも伝わってくる。
ある日のこと、その美人がやってきていつものようにカウンターに座った。
店にはボクとその女性しかいない。おーし、チャンスだ!
ボクは内心ドキドキものだったけど思い切って尋ねてみた。声も心なしか上ずっていたかもしれない。
「お近くにお住まいですか?」 ・・・こんなときは小倉弁が出ないもんだね。
すると、その女性はにっこり笑って、「前で踊っているんです。私」と言った。
「そうですか・・・えっ? ええーっ? えええーっ?」
アベベの前にあるのは、A級小倉劇場というストリップ劇場だ。
とすると、この美人はそこの踊り子さんということか。
きっと、このひと、いろんな意味で男どもを虜にするんだろうなぁ・・・
これまたとびっきりの優しい笑顔にボクはますますファンになった。
だけど、しばらくは「アベベのミステリアスビューティ」のまま、皆には内緒にしとこう。
それから、皆が「どこの誰だろう?」とあれこれ話すのを、ボクは随分長い間楽しませてもらった。

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芸術はコミュニケーション

田中泯とデレクベイリーのコラボパーフォーマンスを観たことがある。
田中泯というのは、田んぼの中でダンスを踊るというような既成概念にとらわれない独特のダンス活動を行い、世界的な評価をもつダンサーだ。
何年か前のNHK朝ドラ「まれ」で渋い塩職人のおじいさんを演じていた人という方がわかるかもしれない。
かたやデレクベイリーは世界的なギタリスト。本当にすごいコラボだ。
ただ、会場はとあるボーリング場。
前衛芸術全盛で、結構なんでもありの時代だった。
まずボーリングのボールをコロコロと投げて、そのボールが転がっているレーンの真ん中で田中泯がデレクベイリーのギターに合わせて踊る。
ここまでくると、もうようわからん・・・。
芸術というと、一部の見識ある人が理解するもの、なんか高尚なものと思っている人がいるかもしれないが、ボクは、あくまでも提供する人と受け取る人とのコミュニケーションと思っている。
音楽もまたしかりだ。ミュージシャンは自分の意思を音にしてオーディエンスに伝え、オーディエンスもまたそれを受け取って反応する。
ミュージシャンが提供するその意思は、オーディエンスの耳に慣れたものから前衛的なものまでいろいろだ。
前衛といったって時代を少しだけ先んじるものだから芸術たるのであって、たとえ少々わからん部分があったとしても、訴えかける力さえあればオーディエンスの心にずしんと響くはずだ。
これがただ単にわけわからんものであれば、演者の独善でしかない。
もっとも今世界のジャズファンに受け入れられ、支持されているパーカーだって、彼のアドリブは最初、「チャイニーズ・ミュージック(=わけのわからない音楽)」と批判されていたらしいから、難しいところ。
使い古された音ではない、一歩先行く音を提供したいとボクは模索する。
そんなことを話していると、スタッフが、「そういえば、田部さんの言うこと、ときどきわからないです。」と言った。
うーん、コミュニケーションは難しい。

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12月30日(日) 18:00 忘年会

START/18:00
参加費1000円
飲み物、食べ物持込み可
ドリンクをお店で注文する際はドリンク代を別途頂戴致します。

セッション有り

10月18日(木) 20:15 B.B Live

OPEN /20:00
START/20:15(2stage)
チャージ/1,500円(要1ドリンクオーダー)

【Jazz】
田部俊彦:Pf
小車洋行:Bs
原田敦:Dr
その他ゲストミュージシャンでお送りします。