ライブの後、楽器を片付けていると、お客さんから声をかけられることがある。
「今日のライブはなかなか面白かったですね。」とか、「あんなに長時間演奏して疲れないんですか。」とか、「楽器を始めてどれくらいになるんですか。」とかとか。
それらに交じって「田部さんはプロにならないんですか。」と聞かれることがある。
「ボクはほとんど毎日音楽をやってお金を稼いでいるんですよ。」と言うと、「へぇ、まるでプロみたいですね~。」ということばが無邪気に返ってきたりする。
普通のひとはテレビに出たり、雑誌に載ったりしているミュージシャンをプロミュージシャンと思っているようだから無理もない。
プロって何だろう!
プロと名乗っているミュージシャンでも奏でる音楽はいまひとつという人も当然いるし、アマチュアミュージシャンと言われている人のなかにも凄い才能を持っていて思わず引き込まれるような演奏をする人もいる。
ボクなりに表現すれば、プロのミュージシャンとは音楽で生きている人、ビシッと音楽と対峙している人だ。
ボクは、ミュージシャンは芸術家である前に職人だと思っている。
だから、本来ならば、他の職人、つまり料理人や植木職人と同じように職業として成り立っても不思議ではないと思っているけど、ミュージシャンの場合、現実にはなかなかそうはいかない。自分のやりたい音楽だけをやって生活するのは難しい。なかには、全く違うジャンルの仕事とかけもちという人もいる。
ボクの場合もジャズだけはなく、今まで、レゲエやブルースをやったこともあるし、歌謡曲のタレントのバックバンドをやったり、ローカル局の歌謡番組のバックやコマーシャルの音楽、ホテルで催されるパーティのBGM、デパートやスーパーの開店記念のデモ演奏、ナイトパブやクラブでやっているミュージシャンのエキストラなどなど、さまざまなことをやってきた。
ただ、今振り返ってみると、「自分のやりたい音楽」とは言えなかったいろんな経験のひとつひとつが、ボクの「やりたい音楽」の幅をひろげてくれた気がするし、ある程度歳をとると、「やりたい音楽」そのものが変わってくることもある。
ボクの人生のど真ん中にいつも音楽がある、・・・なんてね。