ねずみ男、再び

町田謙介、通称ねずみ男。
彼が独特の凄い音楽的センスを持ち、かつ、気のいいミュージシャンというのは前にも話したと思う。北海道生まれで、美大出身という変わり種だ。
アベベのマスターをやっていたとき、ボクは釣りが好きで近くの川でよくフナを釣っていた。釣果を家族に示すため、一応家に持って帰るものの、フナは食べるわけにもいかず、そのまままた川に放していた。
ちょうどボクの家に居候していたねずみ男にそのことを話すと、彼は、「じゃ、池を作りましょう。」と言って、さっさとボクの家の庭に池を作ってくれた。
凄い!なかなかのクオリティー。
何でもできるし、フットワークがこれまた軽いのだ。
その彼が、ボクが北九州市立美術館アネックスでコンサートをすると言うと、ついてくると言う。ボクが主催するコンサートじゃないから、残念だけど出演させるわけにはいかないよと言うと、バンドボーイとして付いてくると言うのだ。
荷物を運んだり、楽器を動かしたりと、ねずみ男は、はつかねずみよろしく実にくるくるとよく動いた。
かいがいしく働いている彼をみていると、なんだか少しかわいそうになって、「休憩時間に少し演らせてもらったら?」と言ったら、これまた嬉しそうに、「いいんですか?」と答える。
休憩時間になってギターを片手に彼が歌い始めると、会場の空気が一変した。
例の太い、体の奥から絞り出すような声に、その場にいた人たちが皆引き込まれていくのがわかる。
美術館のスペースに異空間が出現した。
僕らミュージシャンも思わず聴き惚れるほどだ。
「う~、もってかれたな。」・・・・そうは思っても、悪い気はしなかった。
本当に彼の音楽は多岐にわたり、そのセンスは抜群だ。なんてったってとびきり面白いヤツなのだ。
町田謙介、今でもきっとどこかでライブをやっていると思う。
彼の名前を見つけたら、ぜひ一度聴いてみてほしい。

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