「先生、なんで無理数の√5と無理数の√5をかけると有理数の5になるんですか?」
こう質問した中学生のボクに、数学の先生は、何を馬鹿なことを聞くんだとばかりにパッコーンと定規でボクの頭をたたいた。
「なんで?それが答?」 まさにいま流行り(?)のパワハラだ。
それ以来、この疑問はもやもや感をもったままボクの頭の隅に棲みついた。
ボクの知人に大口純一郎というピアニストがいる。
彼と最初に出会ったのは、東京のあるライブハウス。
当時のボクはプチ家出をして東京の友人の下宿にころがりこんでいたのだが、たまたま出かけた先のライブハウスで彼はピアノを弾いていた。
無茶苦茶うまいそのピアノにボクは衝撃を受けた。
ライブの後に弾いていた上智大学の学生のピアノでさえ、そのあまりのうまさに東京と九州のレベルの違いを見せつけられた思いがしたものだ。
それから20年くらい経ったある日のこと、もうひとりの知人、加藤登紀子のバンドマスターをしているツゲイさんから連絡をもらった。これから大口さんとお酒を飲み、ラーメンを食べるから出てこいという。ツゲイさんは、丸和前のラーメンの大ファンで、北九州に来た時には必ず立ち寄るという心の入れようだ。うまいよと大口さんに話したら、是非食べたいということになったらしい。
ボクはこのとき初めて大口さんと話したんだが、なかなか面白い。3人でさんざん飲んで、音楽の話をしていると、大口さんが東工大の出身だということがわかった。
酒の勢いも手伝って、ボクは長年の疑問だった例の無理数・有理数の質問を大口さんにぶつけてみた。大口さんは笑いながら、「田部君、√の方から考えるからわからなくなる。それはね・・・」といとも簡単に説明してくれた。
これこれこれよ。ボクが聞きたかったのは。
それからは数学談義。大口さんは音楽の話をするときと同じように、いやそれ以上に活き活きといかに数学が面白いかを僕らに説いた。
そういえば、純正律と平均律の前にあったピタゴラス音階、これを発見したのは数学者のピタゴラスだった。実に面白い!
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